県議会一般質問

平成17年9月定例会

質問:馬場せいし

 おはようございます。自由民主党の馬場でございます。
 この9月議会のトップを切って、自民党を代表して質問をさせていただきます。議員の皆さん方には、大変この12日間お疲れでございました。まだまだ睡眠時間もとれないままここに座っておられる方もたくさんいらっしゃると思いますが、どうか御清聴いただきたいというふうに思います。
 一昨日の衆議院議員総選挙でございますが、自公連立政権の歴史的勝利に終わりました。自公連立政権の郵政改革を突破口とする構造改革路線が、国民の多くの支持を得たという結果が出ました。県内5選挙区においても、2区から5区まで勝利をしました。また、福岡10区から出馬の西川代議士、比例の林田代議士、公明党の江田代議士と、県関係議員も引き続き国政の場において御活躍いただけることとなりました。大変心強い結果であります。
 私は熊本1区でありますが、熊本1区は、長い間政権与党とのパイプを失った選挙区でありました。その間、政治的に失ったものは大きく、またたくさんのチャンスも見逃してきたのではないかと思います。しかし、今回は議席をとることができました。残念ながら、今回の選挙においても小選挙区で勝利することはできませんでしたが、全くの新人が、たった4カ月前にゼロからのスタートを切ったわけであります。その中で、自民党候補、木原候補が、3期目を目指す民主党候補に肉薄し、約2,500票差まで詰め寄ったことは、これは我々自民党の大勝利であると確信しておりますし、民主党に対して、市民の審判はやはり厳しいものであったなというふうにつくづく感じております。今後、熊本県のかなめの位置にあるこの熊本1区の代議士として、県政発展に大いに貢献してもらいたいと考えております。
 また、各選挙区において、公明党の皆様方の力強い御支援をいただきましたことを、自民党を代表いたしまして、厚く御礼申し上げさせていただきたいと思います。
 さて、自公連立政権の327議席獲得という、圧勝という結果を踏まえて、今後熊本県の課題についてどんな影響があるか、そういった所見を知事にいただきたいというふうに思います。
 構造改革の今後の進み方、都会型政治、財政再建、公務員改革、後ほど三位一体改革や道州制なども触れていきますが、地方にとっての環境は大きく変化するのではないかと考えております。まだ選挙から中1日しか間がない現時点では答弁しづらいところもあるかと思いますが、知事の所見といいますか、感想といいますか、そういったものをいただきたいと思います。

答弁:潮谷義子 知事

 今回の衆議院選挙は、まず話題性が非常にあったという印象を持っております。例えば、郵政民営化法案の参議院否決という解散に至るいきさつ、それから、地元と縁のない無関係な候補者、特に女性の候補者の擁立、新党結成、各政党の選挙戦術の違い、こういった点で非常に話題性も高かったと思いますし、有権者の関心もそのことによって高くなったような気がいたします。結果として、県内、全国ともに前回の投票率を上回りましたことは、国民の政治への参画という観点からは高く評価をしております。
 また、59年ぶりと言われておりますけれども、史上最高を更新しました43人の女性議員誕生も大きな出来事として受けとめています。
 選挙結果は、自民党単独で絶対安定多数、そして公明党と合わせた与党では3分の2以上の議席を獲得されましたが、これは、争点を改革の本丸と位置づける郵政民営化に絞り込みながら、改革への決意やこれまでの実績等を訴えられたことが有権者にわかりやすく評価されたものではないかと考えています。
 いずれにいたしましても、国民が選択された結果でありまして、与党におかれましては、国民の負託、大差での勝利の重みを十分認識していただき、政権公約の具体化に当たりましては、選挙時に限らず、常に民意や地域の実態を把握されて、国会での十分な審議等を通してしっかりと説明責任を果たしながら、国民に見える形で政策を進めていただきたいと考えています。特に、国民生活に密着した年金、医療、障害者の自立支援といった社会保障制度改革など、地方や生活者の視点に立って進めていただきたいと切望しています。
 県としても、道半ばであります三位一体の改革の推進や水俣病問題への対応など、引き続き注視しながら、あらゆる機会をとらえて、国に対しても積極的に働きかけてまいりたいと考えています。

質問:馬場せいし

 ありがとうございました。
 今後の国と地方の関係というのは、これからしか――まだ現時点ではなかなかコメントしにくいところがあると思います。こんなことを申し上げるとおかしいですが、私どもも地方の議員として、余りにも圧勝し過ぎたという部分の中で、心配するところもございます。ただ、これもやっぱり国政の中において、民主党が余りにも議席を減らしたということであれば、これは政府の暴走を防ぐには力が足らぬということでありますから、今後は、私ども地域で頑張っていく地方議員というものが、やっぱり党本部に対して、また政府に対して、しっかりと物を言っていかなきゃいかぬのではないかというふうに思っております。また、その辺は執行部ともしっかりと連携をとらせていただきながら、頑張っていきたいというふうに思っております。
 次に、三位一体の改革と財政問題についてお尋ねをいたします。
 小泉総理のリーダーシップのもと、小さな政府の実現を図るべく、官から民へ、国から地方への構造改革が進められてまいりました。特に、国から地方への改革では、地方にできることは地方に任せるという考え方のもと、国から地方へ配分する補助金を減らし、その分を国税から地方税へ税源移譲することで、地方の裁量を高めるとともに、あわせて地方交付税の改革も行うという三位一体の改革が平成16年度から本格的に進められております。
 この問題には当初から重大な関心を持って取り組んでまいりましたが、この改革がどのように進んできたかを振り返りますと、例えば平成16年度の国の予算では、約1兆5,000億円の国庫補助負担金の廃止、縮減に対し、税源移譲は約6,300億円と極めて不十分なものでありました。また、地方交付税等は、地方交付税制度始まって以来最大の約3兆円が唐突かつ大幅に削減され、県や市町村の今後の財政運営に大混乱を来しました。これはまさに、地方分権という名をかりて、国の財政再建のしわ寄せを地方に押しつけたものであります。
 平成17年度の国の予算では、昨年11月26日の政府・与党合意に沿って、約1兆4,000億円の国庫補助負担金の廃止、縮減に対して、税源移譲は約1兆1,000億円とされ、また、地方税、地方交付税等を合わせた一般財源の総額は、平成16年度の水準がおおむね確保されることになりました。
 この数字だけを見れば、平成16年度より多少はましだと感じられますが、内容をよく見ますと、知事も言っておられますけれども、先送りが多くて、内容も満足できるものではなく、あわせて今後の成り行きには大きな不安を持つものであります。
 そうした経緯をたどりながら進められてきた三位一体の改革は、いよいよ平成18年度の国の予算案の決定において一応の区切りを迎えます。真の地方分権の実現に道筋をつけるための正念場を迎えているという認識のもとに、質問に入っていきたいと思います。
 この改革が県財政にどんな影響を与えているか見てみますと、スリム化や交付金化分を除いて、国庫補助負担金は約232億円減少し、その見返りとしての税源移譲等は約201億円となっており、差し引き約30億円の減少となります。また、平成16年度に地方交付税等が約300億円も削減されており、財政健全化が水泡に帰しかねない状態になりました。今後も復元される見込みはついておりません。
 こうした影響もあって、本県の予算は、平成13年度から5年連続の対前年度マイナス予算となっております。県民生活のインフラとしての社会資本整備の重要性に配慮する観点から、単独の投資的経費については平成15年度の水準を何とか維持されておりますが、大変厳しい財政運営を強いられていることがわかります。
 しかし、そうした中にあっても、財政調整用の4基金をふやし、また、県債残高がふえないよう、新規の県債発行を抑制するなどの努力がなされております。
 行財政改革に関しては、熊本県を初め地方の方が国よりも進んでおります。国、地方、そして熊本県の一般歳出の推移を比較してみると、平成5年を100としたとき、平成17年度の一般歳出の推移は、国が118.5であるのに対し、地方は100.5、さらに熊本県は93.7となっており、国よりはるかに行財政改革に取り組んでいることがわかります。
 とはいえ、本年2月に示された中期的な財政収支の試算では、行財政改革等に取り組んだ場合でも平成20年度には214億円の財源不足が生じるという、そういった試算が示されております。その上、財務省は、さらに地方交付税等を4兆3,000億円削減すべきとの主張を展開しました。
 もし仮にこれが実現した場合、熊本県への影響は、平成16年度の300億円を上回る約460億円もの額となり、平成20年度を待たずして、実行され次第直ちに赤字再建団体に陥ることになります。全くもってむちゃな話であります。
 そして、先月末に平成18年度政府予算の各府省庁の概算要求が出そろいましたが、その内容を見てみますと、地方の意見は全くと言ってよいほど無視されております。
 そもそも我々地方6団体は、何も好き好んでこうした提案をしたのではなく、政府の要請に基づいて地方の改革案を取りまとめたのであります。国がこうした経緯を全く認識していないという状況であれば、今回も到底国を信用することはできず、強い態度で臨まなければ地方の改革案は実現しないと考えております。
 また、地方交付税等について総務省が示した仮試算では、引き続き前年同水準とされております。しかし、財務省サイドからは、地方財政計画には過大計上があり、大幅に切り込む必要があるとの宣言が早速なされております。
 総選挙も終わり、新しい内閣がスタートします。休眠状態だった三位一体の改革もいよいよ動き出すと思われます。義務教育国庫負担金や生活保護費の国庫負担率の引き下げ等の問題とともに、本年7月に地方6団体が提案した税源移譲額6,000億円に見合う国庫補助負担金改革案がどのような決着を見るのか、3兆円の税財源移譲に向けた税制改正はどうなるのか、そして地方交付税等は確保されるのかなど先行き不透明な中で、年末の政府予算案の決定まで予断を許さない状態が続きます。
 そこで、知事にお尋ねしますが、このように三位一体の改革の見通しが不透明な中、県として、この改革にどのようなスタンスで臨もうとされておるのか、また、平成18年度の当初予算編成に向けてどう臨まれるのか、その基本的考え方をお聞かせください。

答弁:潮谷義子 知事

 まず、三位一体の改革に臨むスタンスについてですが、この改革は、地方税財源の充実強化を図ることで、住民により身近な地方自治体に財源と執行を一体的に担わせ、国、地方を通じた効率的かつ効果的な行政システムの実現を目指すものです。また、全国画一的な基準で縛られるという補助金の弊害を取り除き、より県民や地域のニーズ、実態像に即した行政サービスの提供を可能にするものと理解をしています。
 しかし、これまでの国のこの改革の取り組みを見てみますと、国と地方の協議の場、これが設けられたということでは評価はできますけれども、しかし、一部にその評価はとどまりまして、国の財政再建に主眼が置かれ、真の地方分権の実現にはほど遠い内容であったと言わざるを得ません。
 この改革は、議員御指摘のとおり、これから大きな正念場を迎えます。着実な成果を上げるためには、これまで以上に自治体関係者の力を結集して、国への働きかけを強めていく必要があると考えています。
 これまで、県といたしましては、全国知事会を通じた活動、県内の自治体代表者と連携した国への政策提言、意見書等を積極的に出してきたところでございます。また、県議会におきましても、国への意見書の提出など、大きな役割を果たしていただいております。
 引き続き、地方分権に対する県民の広範な理解を求めながら、県議会とともに、また、自治体代表者と力を結集して、地方の実情と考え方を粘り強くしっかりと国に伝えていく所存でございます。
 次に、平成18年度予算編成についてですが、三位一体の改革の動向など先行きが不透明な時代だからこそ、そうした時代変化にも適切に対応できるよう、私みずからリーダーシップを発揮して、万が一にも財政再建団体に陥らないよう、職員の意識改革を図りながら、行財政改革を加速し、歳入歳出の徹底的な見直しを進めてまいりたいと考えています。
 具体的には、本年2月に策定しました県行財政改革基本方針に基づきまして、17年度実施計画に掲げた185件の事業の見直しに取り組み、うち105件につきましては実施済みまたは実施中であり、残り80件につきましても事業の進め方等について検討をしているところでございます。これらの結果を検証しながら、来年度予算に結びつけてまいります。
 また、同時に、来年度事業のさらなる重点化を図るため、政策評価を通じて372の施策や事業の課題を一つ一つ浮き彫りにし、改善、見直しの方向性を明らかにした上で、あらゆる産業の元気づくりなど重点6分野ごとにプロジェクトを決定し、その中で貢献度の高い事業を部局の枠を超えて選定し、予算の一層の重点的配分に努めていくこととしております。
 さらに、この10月に示す予定の平成18年度の予算編成方針にあわせて、歳入や歳出予算の性質ごとに大まかな収支見通しを試算として示すということにしております。
 そのねらいは、予算の要求、査定という一連の予算編成の過程で、全職員が県財政の現状について共通の理解と認識を持って取り組んでもらうことにあります。このことによって、より質の高い予算編成ができるものと考えています。
 このように、平成18年度当初予算編成は、職員の意識改革やさらなる行財政改革を通して、厳しい財政状況の中にあっても、県民にとって真に必要な行政水準は維持しながら、本県の将来を見据えた重要な事業へ予算を重点配分していく基本方針で進めてまいりたいと考えております。

質問:馬場せいし

 ありがとうございました。
 これからが正念場を迎える三位一体の改革に対する知事の決意はわかりました。財政対策特別委員会の中でも、地方の行財政改革等の障壁となっている国の地方団体への関与、規制の撤廃について、国に対して強く訴えていくこととしております。
 また、地方の命綱とも言える地方交付税等の確保については、自民党県連としても、しっかりと国に物を申していくこととしております。同じ県政に携わる者として、一緒になって国に向かっていきたいと思います。
 また、これまでの三位一体改革等により厳しい財政運営を迫られている中、施策、事業の重点化に精いっぱい努力されていることも今の知事の御答弁でわかりました。しかし、残念ながら、現段階では県民の中に重点化が図られておるという実感はないというふうに思います。先ほど知事からもお話がありましたように、限られた予算の中で、本当に必要な事業を重点的に行っていくためには、県職員一人一人が、不要不急の事業を徹底的に見直し、大胆に廃止するなど、考え方を転換することが必要であります。
 来年度の予算では、ぜひとも、県民が実感できる、県民が元気になる、本当の意味での思い切った施策、事業の重点化を切にお願いしたいと思います。
 次に、道州制に関する県の課題認識と州都の問題について質問をいたします。
 道州制については、いまだ県民の間で議論が高まっているとは言えませんが、これまで県議会でも何度か質問がされております。
 国の第28次地方制度調査会では、17年度末の最終答申に向けて、道州制の制度設計を中心に検討が進んでおり、また、その中で全国を複数のブロックに分けた道州制の区域例が示されるなど、議論は着実に進んでいます。また、経済同友会や関西経済連合会など民間団体においても、道州制に向けた議論が進められているところであります。
 九州においても、九州・山口経済連合会や九州経済同友会が道州制に向けた提言を本年5月に行っており、7月に霧島で開催された九州地域戦略会議夏季セミナーにおいては、道州制を検討するための官民連携した研究会の設置が経済団体から提言されたと聞いており、九州内においても着実に議論が高まっているのではないかと思っております。
 自民党本部においても、本年2月に道州制調査会を設置し、道州制の検討とあわせて北海道の道州制特区構想の支援を行っており、また、今回の衆議院選挙でも示された自民党のマニフェストにおいても、地方自治及び国の統治システムを効率的でスリムなものに再構築するため道州制導入を検討するとしており、その先行的試みとして北海道道州制特区を推進すると盛り込んでおります。
 実際に北海道では、構造改革特区の制度を活用し、全国に先駆けて道州制導入を図ろうとしており、政府に対しても積極的な働きかけを行い、平成17年4月には内閣府に道州制特区担当推進室が設置されました。
 しかし、道州制の導入は、国の統治システムの根幹にかかわる大きな問題であり、国と地方の役割分担の明確化とともに、国の権限を地方に移すことが不可欠であり、三位一体の改革以上に国と地方の激しいせめぎ合いが避けられないと考えられます。
 改革の際には常に見られるように、総論部分である程度進められたものの、この問題においても、権限移譲など個別具体的な段階になると急に進展が見られないといった状況でありまして、今後は政治がリードしていく必要があるのではないかと思います。さらに言えば、国の提案に対して地方が受け身に回っては、もう三位一体の話と一緒であります。地方の側からも積極的に議論を持ち上げていくことが大切であると考えます。
 真の地方分権を実現していくためには、これまでに述べてきたほかにも議論はいろいろとありますが、将来的な道州制移行は避けて通れない課題であると考えます。そして、仮に道州制に移行する場合、本県としての重要な課題が州都の問題であると思います。
 長期的な課題ではありますが、九州の中央に位置し、国の出先機関が幾つも立地している本県としては、県勢発展を図る上でも、早目にアピールしていくことが必要ではないかと考えます。
 九州新幹線鹿児島ルートの全線開業が視野に入る中で、九州内において時間距離が短縮し、利便性の向上や交流の拡大が期待される反面、いわゆるストロー現象も懸念されております。
 今後の激しい都市間競争を勝ち抜き、九州の中で熊本市が存在感のある都市として発展し続けるには長期的な戦略が必要であり、中期的には政令市移行が必要であると考えられますし、10年後、20年後の熊本を考えたとき、最終的には州都を目指すことが必要ではないかと考えているところであります。
 今後九州が一体となって道州制に移行することになれば、九州の中央に位置する本県としては、取り組む大きな課題が州都の問題であります。重ねて申し上げます。経済的な中心は福岡市、行政の中心は熊本市と、機能分担を促す意見が本県経済界からも出てきており、自民党県連の中でも、古閑会長が、6月の党大会のあいさつにおいて州都を目指すと発言されるなど、一段と関心が高まってきております。
 他県を見てみますと、既に中国地方では、広島県と岡山県の間で州都を目指したアピール合戦が始まっており、九州においても、鳥栖市周辺では州都に手を挙げるような話も出ているような状況であります。長期的な課題として州都を目指すことは、決して早過ぎることではないと思います。
 そこで、知事にお尋ねをいたします。
 まず1点目として、このような最近の動きを踏まえての道州制に関する課題認識や今後の検討課題について。
 次に、2点目として、州都の問題ですが、必ずしも大都市が州都になると決まったわけでもなく、熊本市自身がまだ州都を目指すと言われているわけでもない段階ですが、将来的に道州制になった場合、州都を目指すような考え方、または支援するような考え方を知事は持っておられるのか、政治家の視点でお答えをいただきたいと思います。

答弁:潮谷義子 知事

 まず、道州制に関する基本的な考え方ですが、市町村合併、高度情報化、県域を越えた社会経済活動の進展とともに、それらに対応する交通基盤整備、産業振興、こういった政策課題を踏まえますと、道州制については、今後、国の統治システムの一つの方向性でありまして、地方分権を実現する場合の有効な手法であると考えています。
 行政に対する住民の満足度を高めるためにも、思い切って地方の裁量権を拡大するという視点から地方分権を進めていくことが必要であり、現在の国、県、市町村という仕組みのままでは地方分権の実現は難しいということになってくれば、道州制への移行ということも具体的な選択肢に入ってくるのではないかと思っております。
 しかし、道州制に至るプロセスを考えました場合、国のあり方の根幹にかかわる問題でもあるため、十分な検討と国民的なコンセンサスが必要と考えております。国の第28次地方制度調査会においても検討が進められておりますが、制度論中心の議論の段階でありまして、いまだに国民的な議論にはなっていないと認識をしています。まずは、県民の目線に立って、道州制に移行することの積極的な理由が何であるのか、県民を巻き込んで議論を深めていかなければならないと思います。
 また、円滑な道州制移行のためには、九州各県が、共通利益を形成、追求するとともに、共同体意識を醸成することが必要であります。既に、観光振興や産業廃棄物対策の分野では、九州各県が一体となって取り組みを進めておりまして、それ以外にも、新たな少子化対策や食の安全、安心の推進など、共通課題に関する連携した取り組みをさらに積み重ねていくことが重要と考えています。
 次に、州都についてでございますが、将来、道州制のイメージが形成され、国民の議論が高まってくれば、いずれ州都の問題も本格的に議論されることになる課題であると私も考えております。各県においても意欲を持って取り組まれると思いますが、熊本県においても、今のうちからそれを見据えた対応を行っていくことは大切であると考えています。
 具体的な州都の問題につきましては、県だけではなく、実際にそうした都市機能を担うことになります市町村の意欲、そして取り組み、それが十分熟していること、これが当然必要になってくると思います。
 いずれにいたしましても、熊本県といたしましては、将来九州が一つになったとき、ただ九州の中心に地理的に位置している、そういうことではなくて、熊本県の持つ強みを生かし、九州の中でリーダーシップをとれるように、それにふさわしい自力を備えた地域となることを目指して、さまざまな施策を今のうちから進めていくことが必要ではないかと私は考えています。
 九州各県から、熊本の位置づけについて名実ともに評価していただけるよう、熊本の自力を高める取り組みを官民一体となって進めていくことが必要であり、県経済界との連携にも十分今後とも配慮していきたいと考えております。

質問:馬場せいし

 ありがとうございました。
 今いろいろとお話がありましたが、今回道州制――今まで道州制のことはここで何回か発言したように思っておりましたが、質問としてはやってきておりませんでした。それで、過去の質問なんかも見てみましたけれども、以前の質問では、道州制に対しては批判的な御意見がこの議会の中でも多かったかというふうに思います。しかし、私自身も、道州制を積極的にというような思いではありません。今回の選挙結果を見れば、なおさら、もしかしたらとんでもなく早く進んでいくのではないか、そういったことを考えると、やはりこちら側から考えていかんといかぬのじゃないかというような思いであります。
 以前の道州制に批判的な話の中で、社会情勢が随分違うところは、昔は右肩上がりであったということであります。今はそういったところの行財政改革というのが一番の課題というようになっている中では避けて通れないのではないかというような思いがあるからであります。
 それと、知事自身もおっしゃいましたけれども、中央に位置しておるというだけではこれは何もならない、機能的にはまだ太刀打ちできていないというふうに思います。ですから、目指すのであれば、もう早くから動きを始めないと、そのときになって、道州制が決まったから動くということになっても、それは間に合わぬと思いますので、こういったお話をさせていただいたところであります。
 また、9月3日の熊日新聞でもありましたけれども、郵政公社九州支社の郵便業務の営業拠点が熊本市から福岡市に移る、それに伴って支社長も福岡市に移るとの報道がなされておりまして、これは皆さん方も少々予測されとった部分もあるかと思いますが、やっぱり驚いたわけであります。今回は業務の一部が福岡市に移ったということで、九州支社そのものは引き続き熊本に存続するわけでありますが、このような動きが出てくることは決して好ましいことではありません。
 郵政公社も民営化すれば支社機能がどのような方向になるのかわかりませんが、将来の州都を考える観点からも、熊本に引きとめることができるよう、熊本市や地元経済界とも日ごろから連携をとっていただきたいというふうに考えております。
 次の質問に移らせていただきますが、アスベスト問題についてお尋ねをいたします。
 去る6月末に、兵庫県尼崎市の大手機械メーカー、クボタの旧神崎工場の社員を初め、出入り業者や周辺住民の間で、中皮腫や肺がんなどの石綿に関連する病気で75名以上の方が死亡していたことが新聞報道されました。これに端を発し、ほかのアスベスト関連の工場や造船業、建設業などにおいても多くの従業員の死亡が次々と明るみになり、現在まで全国的に大きな社会問題となっております。
 アスベストは、天然に産出する繊維状の鉱物で、耐熱、耐薬品、断熱、保温、防音にすぐれ、スレート材等の建築材、車や鉄道車両のクラッチ、ブレーキなどに広く使用されてきました。また、大部分は、ビル等の内壁に保温断熱の目的で吹きつけ材として使用されております。
 このように、今まで広範囲に使用されてきたアスベストは、飲食物等に混入した場合は問題ないと、口から食べ物と一緒に入れた場合は問題ないとされておりますけれども、呼吸ですね、肺に吸入することによって、10年から50年の長い年月を経て、石綿肺、肺がんや悪性中皮腫など健康被害が発生すると言われております。
 本県においても、アスベストを原料とするスレートなどの建築材料の工場やアスベストを含む二輪車のクラッチを製造していた工場が5カ所あったほか、県内にはアスベストを採取していた鉱山が6カ所あり、特に宇城市松橋町の旧鉱山に関しては、周辺の住民の健康診断で胸膜肥厚斑が高い率で認められたため、現在も経過観察がなされていると聞いております。また、アスベストに起因する労災死亡者が本県内にも5名いたとの報道から、県民にアスベストに対する健康不安が生じているところであります。
 このような中、国においては、去る7月29日、被害の拡大防止、国民の不安への対応、過去の被害及び対応の検証を主な内容とする各省庁の当面の対応策が取りまとめられ、発表されたところであります。きょうの新聞にもいろいろ出ておりましたけれども、済みません、詳しく読んでおりません。
 これに先立ち、県においては、相談窓口を設置し、健康不安に対応するなどの措置が講じられてきましたが、過去にアスベストを吸引した人の中で、全国の死亡者が今後40年間に約10万人にも及ぶと予測されておる学者もおり、アスベスト問題がさらに広がってくる可能性が指摘されております。
 さらに、過去の建築物にはアスベストが使用されたものが多く、今後これらの建築物は年数の経過とともに解体されることになります。その解体のピークは約15年後から35年後ごろになると予想されており、解体作業におけるアスベストの飛散防止対策も重要となっております。
 このように、かつてあらゆる建築物に何らかの形で使用されてきたアスベストの問題に対して、県としても、早急、かつまた適切に対応していくべきであると考えます。
 そこでまず、県として、この問題をどう認識しているのか。また、国の当面の対応策に呼応して、どのような対応をしているのか。さらには、県独自の対策として、この問題にどう対応していくのか。
 以上3点について、環境生活部長にお尋ねをいたします。

答弁:上村秋生 環境生活部長

 アスベストは、かつて奇跡の鉱物、天然の贈り物と呼ばれ、熱や電気を通しにくく、磨耗しにくいというすぐれた性質を持っていることから、建材や断熱材など、産業界でさまざまな用途に使われてきたところでございます。しかしながら、1989年には、青石綿と茶石綿につきましては、有害性が高く、長期の潜伏期間を経て発病することから、世界保健機関が使用禁止を勧告しているところでございます。
 我が国では、1995年には青石綿と茶石綿の製造及び使用を禁止し、また、昨年10月には、これら以外の石綿を1%以上含む製品の製造及び使用も原則禁止したところでございます。ヨーロッパの主要国では、2000年ごろまでに相次いで全面禁止の措置が講じられ、一方、我が国ではその対応が十分でなかったとの批判もありますことから、国では、過去の対応の検証や経緯等について、さらに精査しているところでございます。
 本県におきましても、以前にアスベストに関する鉱山や製品製造工場が存在し、宇城市では周辺住民に胸膜肥厚が高い率で認められ、また県内で労災認定後の死亡例もあるなど、県民に健康に対する大きな不安を生じているところでございます。
 アスベストは、現在も身の回りにいろいろな形で存在し、また、数十年後にアスベストが使われた建築物の解体のピークを迎えるなど、今後長期にわたって対応が求められる県民の生命と健康にかかわる極めて重要な問題であると認識しており、迅速かつ総合的な取り組みが必要であると考えています。
 次に、国は、7月29日にアスベスト問題への当面の対応を示し、その内容は、今後の被害を拡大しないための対応、国民の有する不安への対応、過去の被害に対する対応、政府の過去の対応の検証の4本柱から成っています。
 それらを踏まえ、県としましては、今後の被害を拡大せず、かつ県民の不安に対応するため、過去県内に存在したアスベスト製品製造工場の実態調査を実施し、現在調査結果を取りまとめ中でございます。
 また、過去県内に存在した石綿鉱山等の実態調査につきましては国が実施しており、飛散するおそれはないとの結論が出されているところでございます。
 県が管理する県立高校などの1,341の県有施設の調査の結果、吹きつけアスベストの使用が疑われる学校などの26施設につきましては、早期に分析調査を行うこととしており、当面の対策として、施設の状態に応じて、立ち入りの禁止や制限あるいは飛散防止のための応急措置を講じたところでございます。
 また、再確認を要する177施設につきましても、速やかに建築技術職員など専門家による現地調査を行い、必要に応じて分析調査を行うこととしています。今後の調査結果を踏まえ、吹きつけアスベストの除去など、必要な対策を講じることとしております。
 さらに、小中学校などの市町村有施設につきましては、市町村に調査を依頼中であり、9月中には国に中間報告する予定でございます。また、一定規模以上の民間建築物は、所有者などが調査を実施中であり、10月末には国に報告する予定でございます。
 また、建築物解体時に際しては、熊本労働局と連携して、飛散防止及び廃アスベストの適正処理の指導徹底などの取り組みを進めているところでございます。
 最後に、県独自の対策でありますが、県民の不安に対応するため、速やかに本庁と各出先機関に相談窓口を設け、本庁と出先が一体となって、健康相談のみならず、建築材料なども含めた幅広い相談を受け付けております。7月25日には、副知事を座長とするアスベスト問題情報連絡会議を立ち上げ、全庁的な問題として、情報の共有化を図りながら対応に当たってきたところでございます。
 アスベスト問題は、県民の生命と健康にかかわる極めて重大な問題であることから、各種の調査結果などや国の対応なども踏まえて、本県の実情に即した計画的、恒久的な対策を早急に検討してまいりたいと考えております。

質問:馬場せいし

 ありがとうございました。
 ただいま環境生活部長から、アスベスト問題全般に対する県としてのお考えをお聞きしましたが、過去に建築された民間建築物への対策について、改めてお尋ねをいたします。
 お答えいただきましたとおり、県有施設については、アスベスト使用が疑われる26施設について、早期に分析調査を行うとともに、当面の応急対策として立ち入りの禁止や制限等をされたところであります。
 一方、民間施設については、1,000平米以上の大規模なものについて、建築物の所有者等に対し実態調査を実施してもらい、吹きつけアスベストの使用が確認されたものについては、適切な処置や維持管理等を指導していくこととされているようであります。
 しかし、多くの県民が利用する民間建築物に対しては、所有者や管理者の責任にゆだねるだけでなく、県有施設と同レベルに扱い、行政としてより積極的なかかわりが必要であると考えております。
 ちなみに、アスベストは、1970年から1990年にかけて多く輸入されており、この時期の建築物にアスベスト製品が多く使用されております。建築物の耐用年限から考えると、今後これらの建築物の解体が増加してきますので、解体工事に伴い、周辺地域にアスベストが飛散するのを防止するための施策が重要となってまいります。
 民間建築物に対する行政の積極的なかかわり方の一つとして、建築物の解体工事に当たって、建設資材の分別解体等を義務づけた建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律、通称建設リサイクル法が活用できるのではないかと考えます。
 また、建築物の安全性確保には、このアスベスト問題のほかにも、地震に対する耐震化の問題やシックハウスの問題などがあります。地震被害の例としては、3月20日の福岡県西方沖地震でのビルの窓ガラス落下や8月16日の宮城県沖地震でのスポパーク松森温水プールでの天井落下などがあります。地震のほかにも、東京都中央区の外壁タイルの落下事故や六本木ヒルズでの事故が象徴的な大型回転ドアでの事故、また、4年前になりますが、東京都新宿区歌舞伎町の雑居ビル火災などの例もあります。
 なお、地震対策については、ことしの3月、自民党の池田和貴議員が、布田川・日奈久活断層帯など多くの活断層が県下全域に走っている状況から、耐震対策の一つとして、住宅の耐震対策の必要性について質問されているところであります。
 このように、多岐にわたる民間建築物の安全対策のためには、さきに述べましたように、県有施設と同様に、行政がその安全性の確保に積極的にかかわっていくべきであると考えているところであります。
 そこで、建設リサイクル法を活用したアスベスト飛散防止対策を含む民間建築物の安全対策に対する県の取り組みについて、土木部長にお尋ねをいたします。

答弁:松原茂 土木部長

 まず、民間建築物の安全性確保についてでございますが、建築物は、基本的社会基盤としての性格も有しておりまして、災害等に対する安全性を確保し、質の向上を図っていくことは、県民の生命、健康及び財産の保護並びに公共の福祉の増進の観点から、極めて重要なことと認識をいたしております。
 県といたしましては、県民が安心して使える安全な建築物を目指しまして、建築物安全安心実施計画を策定し、社団法人熊本県建築士事務所協会等の建築関係団体等と連携して、新築時の対策を中心に、工事中の監理業務の適正化や完成時の検査の確実な実施、違反建築物に対する指導強化等に取り組んでおります。
 平成17年度からは、新たに、同計画に、既存建築物対策として、民間住宅等の耐震化対策の推進及び病院、ホテルなど多くの人が利用する建築物に対する防火避難設備等の維持管理の徹底、立入検査、防災査察の実施を盛り込み、なお一層の安全性確保に努めることといたしております。
 また、建設リサイクル法を活用したアスベスト飛散防止対策につきましては、同法で、80平米以上の建築物を解体する場合、民間建築物の発注者は、事前に県知事等に届け出なければならないことになっておりまして、この届け出の機会をとらえ、アスベスト製品の適正処理に向けた関係機関との情報の共有化や解体工事における分別、散水、防護等が適切に行われているかどうかの現地指導を徹底したいと考えております。
 今後とも、建築物の安全性確保に積極的に取り組んでまいります。

質問:馬場せいし

 民間建築物の安全対策については、土木部としては、その所管の範疇で積極的に取り組んでいかれるものと受けとめましたが、この対策にはもっと総合的かつ強力に取り組んでいただきたいと考えております。
 そこで、次の2点について提案をしておきます。
 1つは、民間建築物に対してより積極的に行政がかかわっていくために、建築技術職員による立入指導や指示に従わない場合の建築物や所有者の公表など、強い対応ができるよう、国に対し法体制の整備を要望していくこと。
 2点目は、現行の法体制のもとで、県として建築物の安全対策に積極的にかかわるための指導体制の整備。具体的には、食べ物の安全性確保に係る施策に取り組む食の安全・消費生活課や感染症など健康にかかわる危機管理を所管する健康危機管理課のように、民間建築物の安全対策に一元的に取り組むための部署の設置であります。
 ふだんから、この辺は地震が来たら危ないな、火災が来たら危ないなというようなところがあっても、なかなか指導はできないわけであります。これは、民間に対してどれだけの指導ができるかというと、大変厳しいところもあると思いますので、今のようなお話をさせていただいたところでありますし、また、アスベストの問題などについても、報道に過剰に反応というか、されることで不安が高まるという、今も問い合わせが随分来ておるようであります。そういったものをきちっと対応することも、これは過剰に対応しろということだけではなくて、適切な対応ができるような、そういったところを考えていかなきゃならぬのではないかというふうに思います。
 そういった部署の設置に関しても、知事、総務部長、またよろしく御検討いただきたいというふうに思います。
 次に、通告の順番を1つだけ入れかえさせていただきまして質問をさせていただきます。利水事業の方を先に行かせていただきます。
 次に、国営川辺川利水事業についてであります。
 これまで川辺川ダムに水源を求めて計画されてきました本事業につきましては、先般、集落座談会において、ダム案とダム以外案の2つの案を農家に説明し、農家の意向を把握するためのアンケート調査も実施されました。
 この新利水計画策定に関しては、県としても、関係者間の60回以上に及ぶ事前協議の開催、農家との5回にわたる意見交換会及び4回のアンケート調査を実施するなど、これまで必要な手順を踏んで、丁寧な取り組みに努められてきたと評価しております。
 このアンケート調査の結果では、事業参加の意向を示した農家の約7割が、水源を川辺川ダムからとしていることが明らかになりました。これを受けて、利水計画はダム案で進めるものとの考えが地元の首長さんの見方と聞いております。
 しかしながら、新利水計画の策定まであと一歩というところまで来て、今回の収用委員会の取り下げ勧告という、こうした判断をされたことは、何だか手続論が優先されたのではないかというような気持ちもありまして、残念な気持ちもするわけでありますが、現在はアンケートの結果が公表され、県収用委員会の判断もそれなりに出てきたという段階であります。もう利水事業を進めていく上での判断要素というか、判断する時期が来ているのではないかというふうに思います。
 そこで、アンケート結果についてお尋ねしたいと思うのですが、その前に、新利水計画を策定する上での基本スタンスについてお尋ねをいたします。
 知事は、去る7月24日、人吉市での「ひと・水・未来」と題する知事講演会で、農業を営む方々にとって、水は欠いてはならない大事なものですと言われたと聞いております。水を待ち望んでいる農家に確実に水を届けることが行政の責務と考えますが、いかがお考えでしょうか。また、水を届ける際には、渇水にも耐えられるような安定した水を確保することも不可欠と考えておりますが、いかがお考えでしょうか。大変単純な質問でありますが、お尋ねを申し上げます。

答弁:潮谷義子 知事

 農業を営む方々にとりまして、水が不可欠との思いはだれもが認識しているところであります。私も、馬場議員同様、利水問題を考える上での私の基本的な認識もそこにございます。
 水を待ち望む農家に確実に水をお届けすることは、行政にとっても責務であります。このことを最優先課題として、農林水産省及び地元市町村とともに、精いっぱい取り組んでいるところでございます。
 また、農家にとりましては、雨が少ないときほど水の必要性を痛感されることと思います。しかし、現実的には、人為の及ばない渇水が起こり得ることも事実であります。新利水計画では、どのような方法であれ、公共事業としての全国的な基準にのっとり、10年に1度の渇水に対応できる安全度が必要とされております。

質問:馬場せいし

 ありがとうございました。
 基本スタンスについての御答弁をいただきましたが、水はしっかり送らないかぬというようなお話でありますので、それについては安心をいたしたところであります。
 それでは、今回のアンケート結果につきましては、農家の意向としてダム案が優勢な結果が示されたと聞いておりますが、このアンケート結果をどのように受けとめ、今回の収用委員会の判断を踏まえて、今後利水事業をどのように進められていくのか、知事にお尋ねします。

答弁:潮谷義子 知事

 今回のアンケート調査は、関係農家4,240人を対象に行いました。その結果、前回を上回る88%の回答を得ることができました。このことは、関係農家が真剣にお考えいただいた結果だと重く受けとめております。
 アンケート結果では、地区全体の4,240人の対象者の中で「国営事業に参加する」と回答した人は1,775人でございます。このうち1,305人の方が「川辺川ダム案」224人の方が「相良六藤堰案」242人の方が「どちらでもよい」そういった選択をするという結果になっております。
 一方、土地改良法では、除外同意も含め、当初計画の関係農家4,240人の3分の2以上、すなわち、少なくとも2,830人程度の同意が事業成立の要件となります。このため、今回のアンケート結果では、いずれの案でも3分の2以上という確認ができない課題があり、このような状況の中で、同意取得の確実性をどのように分析し、その可能性を高めるかということについて、農林水産省及び地元市町村と一体となって見きわめていく必要がございます。非常にデリケートな問題であることをぜひ御理解いただきたいと考えております。
 本事業は、裁判に敗訴した事業を再び立ち上げていくという特別な事情を抱えております。事業を実施していく上では、地域の対立や混乱を招かないよう、関係者の可能な限りの理解と協力が必要であります。また、同意取得の確実性も踏まえながら、新利水計画の策定を行っていかなければならないと考えています。
 また、今回の収用委員会の勧告に対する国土交通省の判断はこれからなされますが、取り下げ、または却下となった場合も、新利水計画に与える影響への対応について、農林水産省及び地元市町村と十分な協議を行ってまいる考えでございます。
 いずれにいたしましても、利水事業の成立を通し、水を待ち望む農家に一日も早く水をお届けすることを最優先課題として取り組んでまいりたいと考えております。

質問:馬場せいし

 御答弁をいただきました。
 きのうは、農家からの訴えというか、お願いがあっておるというふうに聞いておりますし、地元の農家というのは、一日も早くと今おっしゃっていただきましたけれども、もう40年待っておられます。その辺は、今後推移する――今おっしゃった中で理解する部分もあるわけでありますけれども、今後空白期間がないように、速やかにそういった対策が打てるような施策――施策というか、協議を何十年もやるということ、また、アンケートの結果が出た後でまたアンケートをやるというような話はないというふうに思いますけれども、その辺については先に進めることをしっかりとお考えいただきたいなというふうに思っております。もう後継者なんかもだんだんと年齢を重ねていっておられます。孫の代、ひ孫の代というところまで待てる話ではないんだろうというふうに思っております。
 ただ、それは我が党の松田議員からも最終日に質問があるというふうに思いますので、治水の方の質問に入らせていただきたいというふうに思いますが、川辺川ダム事業等についてお尋ねをいたします。
 川辺川ダムは、昭和41年の計画発表以来39年間にわたり事業が進められてきましたが、いまだその行方が明らかになっておりません。先般、新利水計画策定に向けた農家アンケートの結果が公表される中で、漁業権等の収用について審理していた県収用委員会の判断が示されたところでありますが、このような状況を踏まえ、ダム問題及び利水問題に県が一定の方向を示す時期に来ているのではないかと私は考えております。
 こういう観点から、県政を預かる立場として、知事のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
 まず、球磨川流域の治水対策について、国土交通省は、川辺川ダムの建設に向け事業を進めてきており、あとはおおむねダム本体工事を残すばかりとなっております。
 国土交通省は、平成13年12月、漁業権等の収用のために、熊本県収用委員会に収用裁決申請を行いましたが、その後、収用委員会の審理が続く中、平成15年5月、川辺川利水訴訟において国側が敗訴するという事態に至り、収用委員会の審理ができない状態に陥りました。
 このような事態を受けて、県は、新たな利水計画の早期策定を目指し、国や地元市町村と一体となって取り組んでこられましたが、計画策定作業が大幅におくれ、国土交通省は、収用委員会に対して、新利水計画を受けたダム事業計画変更の方針を今もって示すことができておりません。
 このような状況を踏まえ、収用委員会は、去る8月29日、起業者である国土交通省に対し、収用裁決申請の取り下げを勧告し、取り下げない場合は却下するとの判断を示しました。
 新利水計画の策定まであと一歩というところまで来ておりましたし、県議会としても、本年2月定例会において、県収用委員会の審理状況にも呼応した計画策定作業の速やかな進捗を求める国営川辺川土地改良事業の推進に関する決議を行っていたにもかかわらず、今回収用委員会がこうした判断をされたことは、先ほども申し上げましたけれども、手続論が優先されたような気がいたしておるところでありまして、まことに残念な気持ちがいたします。
 ただ、よくよく確認してみれば、今回、仮に国土交通省が収用裁決申請を取り下げても、あるいは却下というような状況には至らないと思いますが、そうであっても、今後新利水計画が固まれば、その後に手続を改めて踏んでいくことができるということであり、決して流域の治水対策としてダムという選択肢がなくなったわけではないということがわかりまして、幾分か胸をなでおろしたところでございます。
 先ごろ九州に上陸した台風14号は、宮崎県で1,300ミリを超える未曾有の大雨となり、宮崎県、鹿児島県では死者が出るなど、九州各地に大きなつめ跡を残したことは記憶に新しいところでございます。
 人吉・球磨地域においても、熊本県の観測によれば、水上村の湯山では9月5日の降り始めからの降雨量が800ミリを超え、県の市房ダムが一時満水状態となり、洪水調整機能がぎりぎりのところであったとお聞きしております。また、人吉地区では、これ以上水位が上がれば破堤のおそれなどがあり、非常に危険とされる危険水位を超え、人吉市だけでも431世帯1,037名の方に避難勧告が出されておりますし、球磨川流域全体の避難勧告は、5市町村、760世帯2,212名に上るという結果になっております。そして、球磨村、相良村、芦北町を初めとする流域9市町村では、計125戸の住宅へ浸水が見られるなど、住民の方々の生活に大きな影響を与えております。
 振り返ってみれば、球磨川流域では、昭和38年から40年にかけて3年続いた大水害も含め、これまで幾度となく水害に見舞われております。近年の観測データと単純に比較することはできませんが、昭和40年の大水害の際は、五木で800ミリ以上、人吉でも500ミリ、また、錦町で多くの田畑が冠水し、球磨村及び相良村では民家が浸水するなど、流域の住民の方々の生活が脅かされる状態となった昨年の台風16号の際も、球磨川上流部で600ミリということでありますから、今回の降雨量を見ても、いつ何どき水害に見舞われるかわからない状態に置かれていると考えております。住民の方々は、一日も早く治水対策を講じてほしいと切に願っているところであります。
 また、先ごろアメリカ南部を襲ったハリケーン・カトリーナは、ルイジアナ州を初めとする複数の州にまたがり、甚大な被害をもたらしておりますし、今月初めには、東京都内で1時間に100ミリを超える大雨が降り、冠水により交通網に大きな混乱が生じるなど、世界各地で人命や住民生活に大きな影響を与える災害が発生しているのが現状であります。
 県では、国土交通省とともに、平成13年以降、住民討論集会及びそれに引き続く森林の保水力の共同検証において、ダムに反対する住民団体から示されたダム代替案がダムにかわり得るものかどうか、その検証に取り組んでおられますが、治水対策は住民の生命や財産にかかわる問題でありますから、いかに早く対策を講じるかということ、これこそが最も肝要であるということは当然と、私も含めだれもが考えるところでございます。
 これまで述べてきましたとおり、人吉・球磨地域では、近年も災害に見舞われており、世界的な異常気象が続く中、たまたま大事に至らなかっただけではないでしょうか。今回の台風14号でも、市房ダムの洪水調節がぎりぎりのところであったことを考えれば、川辺川ダムがあれば、市房ダムとあわせて、流域の安全が十分確保されたであろうことは想像にかたくありません。
 このような中、収用委員会が却下を前提とした取り下げ勧告を行い、今後流域の治水対策として川辺川ダムがどのようになるのか、大変心配されているところであります。
 県としては、これまで国土交通省とともに、この39年にわたりダムを推進してきた経緯があり、県民の生活の安全を預かる行政として、球磨川流域の治水対策について国とともに考えていくべき立場にあると思います。そういうことから、今こそ県としての考え方を改めて県民にお示しする必要があるのではないかと考えております。
 そこで、お尋ねをいたします。
 球磨川流域の治水対策について、県としては今後どのように取り組んでいかれるのか、知事に御答弁をお願いします。

答弁:潮谷義子 知事

 川辺川ダムは、球磨川流域の治水対策の上から計画が策定され、治水、かんがい、発電、流量維持、この4つの目的を持つ特定多目的ダムとして、国土交通省が事業主体となり進められた事業でございます。
 平成13年の球磨川漁協の2度にわたる漁業補償契約案の否決を受け、国土交通省は、県収用委員会へ収用裁決の申請を行いました。その後、平成15年5月、川辺川利水訴訟の国側敗訴によりまして、ダムの目的の一つでありますかんがいの事業手続が違法とされたことを受け、県は、新利水計画の策定を最優先課題として、農林水産省及び地元市町村と一体となり、さらに、取水源の検討に当たりましては、国土交通省の参画も得ながら取り組んできたところでございます。
 そのような中で、6市町村における説明会において、川辺川ダム案と相良六藤堰案の2つの案を農家にお示しした後、市町村主導のもとに140回に及ぶ農家意見交換会を行い、その後に実施したアンケート調査をもとに、現在、国、県及び市町村が一体となって、農家の意向の詳細分析と事業実施地域の行政案についての検討を進めているところでございます。
 そのさなか、去る8月29日、収用委員会におきましては、国土交通省に対して収用裁決申請の取り下げ勧告がなされ、今月22日を期限として、取り下げか否かの回答を求めるとともに、取り下げがなされない場合は却下するとの判断が示されたところでございます。
 一方、球磨川流域では、昨年の台風16号に続き、先週は台風14号による豪雨に見舞われ、家屋の浸水被害や生活道路の崩壊等大きな被害が発生し、また、多くの方々が避難勧告等を受けて避難を余儀なくされました。流域住民の皆様が、今後の治水対策について大きな不安や心配を抱えておられることは十分承知をしております。
 県としても、とうとい命及び財産を守るため、流域の治水対策に万全を期すことは当然の責務であり、河川管理者である国土交通省とともに、少しでも早く必要な対策を講じていくべきであるというこれまでの姿勢はいささかも揺らいではおりません。
 今後、今月22日を期限とされた国土交通省の回答を受けて、収用委員会としての判断が示される見込みでありまして、その際、国土交通省が今後の治水対策をどのように考えていくのか、その判断を見きわめていく必要がございます。
 今後どのような事態になろうとも、流域の治水対策の再構築は避けて通れないものと認識しておりまして、県としては、国土交通省や流域市町村等の関係機関との協議を密にしながら、流域の治水対策に取り組んでまいりたいと考えております。
 なお、現在計画されております宅地かさ上げ、河川にたまった土砂の除去等、国土交通省が実施主体となる事業につきましては早期の対応を要請しますとともに、また、球磨川支川の河川改修等、県が実施主体となる事業についても、可能な限り速やかな対応に努めてまいりたいと考えております。

質問:馬場せいし

 ありがとうございました。
 現場を熟知していない立場からでありますので、細かいことを一つ一つは申し上げません。今知事の答弁の中でも、少しでも早くという姿勢はいささかも揺らいでいないというようなお話でありましたけれども、私は、先日の台風の際の大雨やアメリカで起きた大災害のことも例に挙げて今後の取り組みをお聞きしたわけであります。
 ということはどういうことかというと、最終的には政治は結果論であります。そういう中で、対策を早く打っていくのか、議論を大事にしていくのか、そのどっちか片っ方をはっきりとこの場で言っていただきたいと、そこまでは申し上げませんけれども、主体がどこかということはもちろんあると思いますが、急ぐけれども難しいと言われたのではないかなというような気もするわけであります。急ぐけれども難しいのか、難しいけれども急ぐと言っておられるのか、その辺をちょっと御確認させていただきたいというふうに思います。
 先ほど最後におっしゃいました県の所管――国土交通省の事業についての早期対応を要請するとおっしゃった部分については、これはいたし方ないのかもしれません。しかし、さっきのハードの話とは別ですよ。県の所管事業についても可能な限り速やかに対応するというような話でありましたが、県の所管事業というのは何かというと、小河川の整備であるというふうに私は聞いております。そうすると、治水対策で心配しとるところを上から整備していくということは、これは通常考えられないことであります。ですから、そこにお答えいただきたいとは思いませんが、その辺はちょっと私はおかしいんじゃないかなというふうに思っております。
 要は、先ほど申し上げましたように、急ぐけれども難しいとおっしゃったのか、難しいけれども急ぐと、急がなきゃいかぬとおっしゃったのか、それだけ確認させていただきたいと思います。

答弁:潮谷義子 知事

 まずは収用委員会のこの状況を踏まえて、国土交通省自体が事業の主体者としてどのように判断されていくのか、今後の治水対策をどのようにされていくのか、ここの判断を見きわめていくということが私はまず県にとっては大事な視点であると、このように思っております。
 そして、もう一つは、県としての役割の中で、球磨川支川、この河川改修等につきまして県が実施主体、こういうような事業もございますので、県は、やはりこういった点をしっかりとやってまいりたい。
 それから、治水という対策の中では、これまでも国土交通省自体が実施責任として、河川にたまった土砂の除去だとかあるいは宅地のかさ上げだとか、こういった球磨川中流域に関してもやりますということを言っていらっしゃるわけですので、そういったことに対しては、私は、早くきちっとやっていくということが必要であると、このように思っております。
 今馬場議員がおっしゃいましたように、困難であるけれども、困難な中でも現状の中で進めていかなければならないものは、国も県もしっかりと治水という観点から取り組んでいきたい。そして、まず早急に、この収用委員会の結論を受けて、治水ということに対してどのように国が方向性をお示しになるのか、そこは県の方としてもしっかりと課題認識の中で対応していかなければならないというふうに思っております。

質問:馬場せいし

 そのままお答えいただいたという感じではないのです。ただ、きょうは代表質問でありますから、これ以上どうだこうだとは申し上げませんが、先ほどアメリカの台風・カトリーナの話もしましたけれども、ブッシュ政権が今大変な批判を浴びておりますのは、治水対策を十分にやっていなかったということだと聞いております。死者は1万人説もあるというような話、まあ経済損失は11兆円も超えておるというような話もありますが、もちろんこれは場所が全く違うところでありますから、そのまま申し上げるわけではありません。しかし、危険ということがわかっておるということであれば、そのままほうっておいた場合こんな状況になって、後から被害復旧に1兆円の予算をつけても、また、2,000ドルカードを配るということでありますけれども、そんなものを配っても人の命も財産も返ってこないんですよ。ですから、その辺をまたしっかりと腹に――もちろん据えておられると思いますけれども、今後、これまで以上にそういった感覚の中で、県民の母として、県民を守るというような決断というものをやっていっていただきたいというふうに思って、次の質問に入ります。
 ただ、その前に、台風14号については、球磨川流域を初め大きな被害をもたらしました。現在その被害状況の調査が進められているところでありますが、被災を受けられた地域の方々に対して、心からお見舞いを申し上げるところであります。
 八代市泉町の久連子地区を初めとする5地区については、国道445号、県道久連子落合線、市道など地域の生活道路が寸断され、36世帯103人が孤立され、住民の方々の日常生活に重大な支障が生じるなど、甚大な被害が発生しております。
 この緊急事態に対処するため、県においては、直ちに久連子地区の仮歩道の設置などの応急対策を実施されるとともに、陸上自衛隊第8師団に対し災害派遣を要請され、陸上自衛隊においては、生活物資の空輸などの支援活動に迅速かつ全力で取り組んでいただき、感謝を申し上げます。
 しかしながら、被災直後でもあり、現時点では、各地域住民の方々の生命線である生活道路の全面復旧のめども立っていない状況と聞いております。
 県議会において県勢の発展に尽力された新八代市の坂田市長も、いち早く現場に赴かれ、救援活動を行うなど、先頭に立って復旧に取り組まれております。
 地域住民の方々は、一日も早い道路の復旧を切望されているところであり、台風14号災害からの速やかな地域復旧に向け、県としても万全の対策を講じていただくよう、これは要望をいたしておきます。
 次に、指定管理者制度についてでありますが、この制度は、平成15年9月に施行された改正地方自治法で新たに導入された制度であり、官から民へという規制緩和の流れの中で、官が独占してきた分野を開放し、広く民間事業者の参入を促し、住民サービスの向上とコスト削減を図ることを目的としたものであります。
 今回の制度導入により、民間経営者の発想が生かされ、より多様で満足度の高いサービスの提供や競争原理によるコストの削減、財政負担の軽減も図られるなどの効果が期待されているところであります。
 制度導入に向け、昨年6月に指定手続を定めた条例を制定し、全庁的な事務処理マニュアルである指定管理者制度の運用指針を作成するなど、着実に準備が進められてきました。既に富岡ビジターセンターなど2つの施設については、本年4月からこの制度が導入されたところでありますが、残りの施設についても、平成18年4月からの制度導入を目指し、施設ごとの個別条例の改正や募集要項の作成など、この秋からの募集開始に向け、具体的な準備作業が進められていると聞いています。
 指定管理者制度の課題については、6月議会で我が党の小谷議員からも質問があり、外部の有識者の意見を踏まえて、運用指針の一部改正が行われております。
 主な改正点は、透明性や公平性などを確保するため、選定委員会の外部委員の数を過半数とすることや、施設の目的や性質に応じた審査基準の見直し、情報提供のルール化などであります。
 新しい制度が導入されるとき、選定の透明性や公平性を担保することは非常に重要なことであり、また、経費節減のみではなく、施設の設置目的に沿った選定を行うことは県民サービスの上からも重要と考えており、今回の改正については一定の評価をしているところであります。
 今議会でも、関連の予算議案等が提案され準備が進んでおりますが、その選定に万全を期され、所期の目的を果たされるようお願い申し上げます。
 ところで、指定管理者の募集についてでありますが、施設の性質や管理業務の内容によっては、県内の事業者でも十分対応できるもの、あるいは県内の事業者の方が県民との連携などの点でよりよい場合もあるのではないかと思われます。自民党としても、地元企業の育成等の観点から、これまでもあらゆる機会を通じて地元への受注機会の要望をしてまいりました。
 今回の制度導入は県内事業者にとっても大きなビジネスチャンスであり、地域経済への配慮というものも必要ではないかと考えます。最大の目的は、民間のノウハウ導入による県民サービスの向上と経費の節減にあることは承知しておりますが、選定に当たっては、あわせてこうした視点も必要ではないかと考えますので、この点について総務部長にお尋ねします。

答弁:北川正 総務部長

 指定管理者制度の導入は、ただいま県議から説明がありましたように、公の施設の管理に当たって、民間の能力を活用しながら、住民サービスの向上と経費の節減を図ることを目的としております。
 このため、指定管理者の選定は極めて重要でありますことから、その選定に当たっては、昨年9月に公の施設の指定管理者制度に係る運用指針を定めまして、全庁的に統一的な事務処理を行ってきているところです。
 こうした中で、緊急時や災害時への初動体制の確保や地域住民の苦情、要望等に対して、迅速かつ的確に対応する必要がありますことから、今回、運用指針の一部を改正しまして、新たに応募資格要件の例として「県内に事業所を有すること。」この1項目を加えたところです。
 今後、この運用指針の改正を踏まえまして、個別の施設に係る応募資格要件につきましては、各所管部局でさらに詳細な募集要項を作成することとしております。
 このことによりまして、県内事業者にとっては新たな事業への参入の機会も広がり、地域産業の育成にも結びつくものと考えております。

質問:馬場せいし

 ありがとうございました。
 しっかりした運用をよろしくお願い申し上げます。
 次に入ります。
 水俣病対策については、昨年10月15日の水俣病関西訴訟最高裁判決で問われた行政責任を踏まえ、4月7日に国において示された今後の水俣病対策に基づき、水俣病関西訴訟と熊本水俣病2次訴訟において損害賠償を認める判決が確定した方々に対し、6月1日から医療費等の支給が開始されました。
 また、県は、7月8日には、地元市町の意向を踏まえて、胎児性水俣病患者への生活支援、水産振興及び幹線道路整備などを内容とする水俣病問題に関する今後の取り組みについて、国への提案を行っておられます。
 県議会としても、これまで水俣病対策特別委員会を中心に、県と一体となって国との協議等を行ってまいりました。また、自民党水俣問題小委員会においても、何度も議論され、国に対してもさまざまな要請等を行ってきたところであります。
 そうした関係者の方々の御努力を経て、平成18年度政府予算に向けた環境省の概算要求において、県の要望について、総合的な水俣病対策の充実強化として、一定程度の内容が盛り込まれたところであります。
 本日は、こうした経緯を踏まえて、今後の水俣病対策についてお尋ねをいたします。
 まず、認定審査会の再開等についてでありますが、水俣病関西訴訟最高裁判決が言い渡され、やがて1年を迎えようとしております。この間、熊本県、鹿児島県に対する水俣病認定申請は急増しており、本年9月9日現在で、最高裁判決以降の両県に対する認定申請者数は2,900人以上に上っております。
 ところが、本県の水俣病認定審査会については、昨年10月末で委員の任期が切れており、その後再任がなされていない憂慮すべき状況であります。また、認定審査会に諮るために必要な認定申請者の検診につきましても、急増する認定申請者に対応した検診体制がとられておらず、検診委託先の一つである水俣市総合医療センターは、県に対し、検診を行う医者の派遣を求めていると聞いております。
 このような中、7月14日の自民党水俣問題小委員会において、環境省に対し、8月中旬までに認定審査会再開のめどを立てるよう指示があったと聞いております。これはできるだけ早期の対応をするようにという趣旨であると理解しております。
 今後の検診体制の確保及び認定審査会の再開に向け、認定業務を国から受託している県としてはどのように取り組んでいかれるのか、環境生活部長にお尋ねいたします。
 続きまして、今後の水俣病対策についてであります。
 判決以降認定申請が急増している中で、認定申請や裁判とは別の救済を図る道として、平成4年から実施している総合対策医療事業の内容が拡充され、拡充後の保健手帳について、10月には再開される予定と聞いております。
 しかし、被害者団体の中には、同じ症状の方には同じ救済をという趣旨で、保健手帳による医療費の支給だけでは不十分であり、平成7年の政治決着時の内容等を要求して提訴するという動きもあるように聞いております。水俣病問題解決を図るという方向からすると、今後どのようになるのかと思慮しております。
 来年は水俣病公式確認後50年を迎えるということでございますが、今後の水俣病対策について、環境生活部長にお尋ねいたします。

答弁:上村秋生 環境生活部長

 まず、検診体制の確保についてでありますが、水俣病認定申請者が急増している中、認定業務を促進するためには、まずは認定審査会にかける前提となる検診業務を迅速に進める必要があります。そのためには、現在の検診医の数では不足しており、医師の数をふやすことが喫緊の課題でありますが、水俣病関係の専門医師の絶対的不足や研修医制度の変更により大変難しい状況となっております。
 この課題につきましては、これまでも熊本大学を中心に御支援をいただいており、現在関係医療機関等との協力について検討しているところでございます。
 また、認定審査会の再開につきましては、国とともに前委員などへの委員就任依頼をたびたび行ってきたところではありますが、依然として困難な状況が続いております。
 県としましては、拡充後の保健手帳の10月からの再開に向け、万全の対応を図ることとしており、その利用状況も勘案しながら、引き続き前委員等の理解が得られるよう粘り強く働きかけてまいります。
 なお、検診体制の確保及び認定審査会の再開につきましては、本県だけの問題にとどまらないことから、引き続き国の積極的な取り組みを強く求めてまいります。
 次に、今後の水俣病対策についてでありますが、県としましては、まず、去る4月に国が示した水俣病対策に沿って、医療対策等の一層の充実や水俣病発生地域の再生、融和の促進などを着実に推進することとしております。
 また、県が国に提案しました対策案や要望事項についても、その早期実現を強く求めてまいります。
 なお、国、県及びチッソ株式会社に対する提訴の動きがあることは承知をしておりますが、県としましては、今後も県議会や国、関係市町とも連携を図りながら、水俣病問題の解決に向けて精いっぱい努力してまいりたいと考えております。

質問:馬場せいし

 ありがとうございました。
 関西訴訟最高裁判決を厳粛に受けとめまして、救済を必要としている被害者に対しての可能な限りの保健手帳の早期申請受け付け再開をお願いしたいと思います。
 また、水俣病対策として、被害者救済とともに、地域の再生、融和については、これは車の両輪でありますから、非常に重要であると認識しております。これについては、7月に、県から国に対して既に提案を行っておられますけれども、先日地元の熊本県と鹿児島県の関係6市町からも国に対して強い要望があっておりますので、引き続きその早期実現についてもしっかりとした対応をよろしくお願い申し上げます。
 最後に、要望でございますけれども、御承知のとおり、九州産業交通は、公共性の高い路線バス事業や本県の重要な産業である観光事業を展開されており、また、交通センターバスターミナル等熊本市の中心市街地における拠点施設を有するなど、県民の日常生活はもとより、本県経済の発展に大変重要な役割を担う企業であります。
 地元企業グループがスポンサーに選ばれなかったのは大変残念でありますが、今回のスポンサー選定には、熊本商工会議所を中心とした地元企業グループも名乗りを上げ、県、熊本市の応援を受けて奮闘されました。残念ながら最終選考で一歩及ばなかったようでありますが、地元の企業は地元で支えるという郷土に対する深い愛情と地域貢献への強い意欲によって団結された地元企業の皆様を、大変心強く感じたのは私だけではないと考えます。
 また、スポンサーの決定は、九州産交の再生の大きな節目ではあっても、決してゴールではありません。大事なのは、これまで順調に進んできた経営再建の取り組みを継続しつつ、さらなる発展を目指して前向きに取り組んでいくことであり、産業再生機構が総合的に判断して行ったスポンサー選定の結果を、地元でもきちんと受けとめることが必要と考えております。
 スポンサーに選ばれたHISグループは、県内の企業や行政と連携して、アジアからの観光客呼び込みを中心とした観光事業の強化やバス事業の継続に取り組む考えを示されております。同グループの中心であるHISは、観光に関するノウハウ等を有しており、経営難に陥っていた長野県のしなの鉄道を再建した実績もあると伺っております。このようなノウハウ等を九州産交の路線バス事業や観光事業に生かすことは、県民の利益につながるのではないかと考えます。
 現在HISグループによる株式の公開買い付けが行われており、報道によると、11月下旬には九州産交の新体制が発足する見込みです。
 執行部におかれましては、県民の生活基盤である公共交通を守るという観点からはもちろん、本県の観光振興、ひいては地域経済の活性化を図る観点から、長期的な視点を持って、よりよい結果をもたらすものとしていただくよう要望をしておきます。
 以上で私の質問を終了させていただきますけれども、何分にもおとといまでの戦いの中で、本当にきちっとした質問ができたとは思いません。今後、またしっかりと勉強させていただきながら、しっかりと頑張っていきたいと思います。
 本日は、自民党の代表質問ということで、皆様方にもゆっくりお諮りする時間もありませんでしたけれども、一応これで本日の質問を終わらせていただきたいと思います。
 本日は御清聴ありがとうございました。

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