県議会一般質問
平成20年9月定例会
質問:馬場せいし
皆さんおはようございます。自由民主党の馬場でございます。
初めて蒲島知事への質問ということになりますけれども、まさかこういった形でこの機会が訪れるとは思ってもおりませんでした。本日は知事を支援する女性の方々がたくさんいらっしゃるということでありますので、なおさら知事とは未来へ向けてのやりとりをしたかったというふうに思いますけれども、本日は、通告書も見ていただければおわかりになるとおり、川辺川1本であります。大変大事なことでありますので、しっかりとお答えいただきたいというふうに思います。
これまで長い間、川辺川流域の住民の皆さんは、このダム問題で苦難と対立、混乱の時代を送ってこられました。この長く悲しい歴史に決断をもって終止符を打つ、このことは、ダム推進、ダム反対、立場が相反する中でも最大の願いであったと私は考えておりました。皆さんもそう考えておられたのではないでしょうか。
そして、その決断とは、治水対策を明確に示すことであります。ダムをつくるかつくらないかが結論ではなく、いかにして水を治めるかであります。今さらこのような話をしなくてはならないとは思ってもいませんでした。
この9月議会で川辺川ダム問題にけじめをつけ、いよいよ県民が蒲島知事に期待する外交官知事としての本領を発揮していただけると大きな期待をしていたわけでありますが、残念ながら、知事は大きなものをしょい込んでしまったのではないかと心配をいたしております。
知事は、3月の知事選挙のマニフェストで県民と約束されたとおり、9月定例県議会の冒頭に川辺川ダム問題についての見解を示されました。結論は、現行の川辺川ダム計画を白紙撤回し、ダムによらない治水対策を追求すべきであるというものであります。悩みに悩んでの判断で、大変であったろうと思いますが、残念ながらダムにかわる治水代替案は明確に示されておりません。
我々は、球磨川流域の治水対策を考えるとき、最も安全度が高く、科学的、合理的な根拠となる治水対策を行うべきで、それがダムしかないならばダムを建設すべきと主張を繰り返してまいりました。
しかし、今回示された知事の見解では、市街地など保全対象の重要性が高い地点は、ほかの地点より安全度を高める対策を行うこと、河道掘削については、アユなどの生息に影響を及ぼさずに、どこまで可能であるかを各地点で個別具体的に考えること、遊水地についても、既存の考えにとらわれず、土地所有形態と通常時の利用についてさまざまな可能性を検討することなど、住民ニーズにこたえるよう、ダムによらない治水のための検討を極限まで追求される姿勢で臨むように、国土交通省に対して強く求めていくということであります。
これは、我々が主張してきた最も安全度が高く、科学的、合理的な根拠となる治水対策とは違う、つまり、ダムにかわる明確な代替案ではなく、これまでの議論を蒸し返すものであります。
そこで、知事にお尋ねいたします。
ダムによらない治水対策を選択され、代替案を示さないことが決断であるとお考えか、まずお尋ねをいたします。
加えて、ダムにかわる代替案を示すことは県として当然の責務だと考えますが、今後代替案を示す考えはないのか、お尋ねをいたします。
答弁:蒲島郁夫 知事
私は、熊本県政の発展のために、川辺川ダム問題をどうしても解決しなければならないと考えました。そのため、半年間の猶予をいただき、今回この問題についての判断を表明いたしました。
もとより、この事業につきましては、賛成、反対、それぞれの立場でさまざまな御意見があることを承知しております。
私の今回の判断は、すべての方に受け入れられるものではないかもしれませんが、住民の皆様方にとって最良の判断をしたものと考えております。
また、最終的には河川管理者である国土交通省が判断する事柄でもあり、私の表明ですべてが決着するわけではないことも承知しております。
そのため、私の判断について、県民の皆様方の御理解と御協力をお願いするとともに、この問題ができる限り早く解決するよう、国土交通省にも私の判断を御理解いただきたいと考えております。
また、ダムによらない治水対策について、地元市町村には、住民との対話を深めるよう、また、河川管理者である国土交通省には、住民の理解が得られる治水対策を早急に検討していただくよう求めてまいりたいと考えております。
国土交通省も、私の判断を尊重する意向を示しており、県としては、今後の検討状況を見きわめてまいりたいと考えております。
質問:馬場せいし
それでは、発言の一つ一つを個別にお尋ねしていきたいと存じますが、「ダムによらない治水対策を極限まで追求する」と述べておられますが、これまで我々も、何度も堤防のかさ上げや河床掘削、遊水地などについても調査研究を行ってまいりましたが、現実的な対応として無理だとの判断をいたしております。
恐らく県の土木部においても同様な見解を持たれているはずですが、それでも極限までとの表現で、ダムによらない治水対策を国に求めていかれる根拠はどこにあるのか、知事がそのような判断をなされた理由について、具体的にお示しいただきたいと存じます。
答弁:蒲島郁夫 知事
私は、抜本的な治水対策を講じる場合は、ダムが最も有力な選択肢であるとした有識者会議の見解を評価しており、治水対策としてのダムの効用も認めております。
ただ、私は、川辺川ダムについての現在の民意は、ダムによらない治水を追求し、今ある球磨川を守っていくことを選択していると考えました。そして、国土交通省に対して、ダムによらない治水対策を追求するように求めています。
私は、有識者会議の委員も指摘されているように、国土交通省は、ダムの建設によって生じる問題に対しては熱心に研究開発を行っていますけれども、住民が提示した代替案に対しては問題を示すにとどまり、そのため住民の理解が得られてこなかったのではないかと感じています。
このようなことから、国土交通省には、ダムによらない治水を極限までやっていただきたいというのが私の強い思いです。
国土交通省も、私の判断を尊重する意向を示しており、県としましては、今後の検討状況を見きわめてまいりたいと考えております。
質問:馬場せいし
知事は、見解の「おわりに」の部分で「ダムによらない治水対策を極限まで追求すると同時に、都市工学の英知を結集して「川とともに生きるまちづくり」を目指すことも必要になると考えます。」と述べられましたが、具体的にどのようなまちづくりを目指すのか、それは流域全体のことを指しているのか、それとも流域の一部のことを指しているのか、また、都市工学の英知を結集するためにはどのような方法があるのか、具体的にお答えいただきたいと思います。
また「「洪水を治める」という旧来の発想から脱却し、洪水と共生するという新たな考え方に立脚すべきである」とも述べておられますが、この洪水と共生するという新たな考え方とは具体的にどのようなことなのか。
共生とは、ともに生きていくと書きますが、洪水とともに生きていくということになると、我々がこれまで国に求めてきた安全度を高めるといった主張とは異なるのではないかと思っております。つまり、少々安全度を低くすることを流域住民は受け入れてほしいといったメッセージが、この洪水と共生するといった言葉に込められているようにも受け取ることができるのです。
そこで、この洪水と共生するという言葉は何を意味するのかをお尋ねいたします。
答弁:蒲島郁夫 知事
有識者会議の報告書において、委員からは、治水のやり方としては、河川の改造によって町を洪水から守るのではなくて、洪水にも適応できるよう都市構造物を改変して町を守る方策をとるという、土地利用規制を伴う都市工学上の問題として考えることもできると指摘されております。
また、国土交通省も、平成20年度予算の説明において、従来の連続堤による対策ではなく、土地利用や施設の設備状況などに応じ輪中堤や二線堤を整備し、はんらんにおいても被害を最小化するなど、ハード、ソフト一体となった減災対策に取り組むとの考えを示しております。
さらに、昨年5月に策定された球磨川水系河川整備基本方針においても、洪水はんらんなどによる被害を極力抑えるため、これまでの洪水の実績なども踏まえ、洪水予報及び水防警報の充実、水防活動との連携、河川情報の収集と情報伝達体制及び警戒避難体制の充実、土地利用計画や都市計画との調整など、総合的な被害軽減対策を関係機関や地域住民などと連携して推進するとしております。
このように、川とともに生きるまちづくりとは、河川のみであるいはハードのみで洪水に対応するのではなく、ハード、ソフトの対策を一体的に行うことで、流域の方々が地域の宝として大切にしている球磨川を守りながら、しかも安心して暮らせるまちづくりを行う、そういうことであると考えています。
そのためには、住民の方々の協力をいただきながら、関係機関が連携して取り組んでいく必要があると考えています。
次に、私が申し述べた洪水との共生とは、地域の宝であり、また、洪水をもたらす川との共生という意味で申し上げたものです。決して、河川管理の責務を放棄し、住民を洪水の危険にさらしたまま放置するものではありません。
これまでの治水の考え方は、河道の整備やダムによる調節で洪水を河道内に治め、町を守るというものでした。これに対し、災害に備えた洪水予報などの警報システムや緊急避難体制の構築といったソフト面の整備に加え、農地を遊水地として活用するなどの方法を取り入れながら人命を守るといった考え方もあります。
これは、流域の方々の意向により、たとえ治水安全度を下げたとしても、早急に対応すべきものを実施しながら、地域の宝である球磨川とともに生きていくことと考えています。
質問:馬場せいし
知事は、今も触れられましたけれども「ソフト面の充実も早急に実現したい」と述べられ「警報システムおよび緊急避難システムの構築など」を挙げられております。そして、それが有効に機能するには、流域住民の主体的な参加が不可欠であり「川を守り、同時に住民の安全をも守るという理念を持って行動できるのは、地域にお住まいの方々にしかできないことです。」と述べられております。
そして、最後に「住民一人ひとりが、地域に誇りを持ち、かつ安心して暮らしていけるようにするために、自分に何ができるのか、真剣に考え、行動していただくことを期待しております。」と述べられております。
これは、簡単に言うと、県では今考えられるソフト面の充実は図るけれども、あとは住民一人一人がよく考え、行動することが大切だと解釈もできます。そこには、県行政として、洪水から県民の生命、身体、財産をしっかり守っていくという気概はほとんど感じられないような気がいたします。つまり、ここでも、住民が望むのなら安全度を低くしても構わない、そのかわり、そのリスクは住民自身が負うべきだとのメッセージが込められているように感じます。
そこで、知事にお尋ねをいたします。
住民が望むのなら安全度を低くしても構わないとお考えなのか、また、その場合の確認はどのように行うのか、具体的にお答えをいただきたい。
また、警報システムや緊急避難システムを早急に構築すると述べられておりますが、具体的にはどれぐらいの費用を見込んでいるのか、また、早急にとはいつごろまでのことを指すのか、お尋ねいたします。
答弁:蒲島郁夫 知事
まず、治水安全度については、どのような治水対策であっても、住民のニーズにこたえ、住民の理解が得られなければこれを実現することはできず、住民の方々の安全を確保することはできません。
住民の方々の理解と協力を得ながら治水対策を着実に進めていくことが、結果として、より高い治水安全度の速やかな確保につながるものと考えています。
また、川とともに生きるまちづくりを進めるためにも、ハード面の対策とあわせて、洪水に備えた警報システムや緊急避難システムなど、ソフト対策の充実が重要になると考えています。
球磨川流域におけるソフト対策については、現在も、水防法に基づき、国、県、市町村が連携、協力し、洪水時における円滑かつ迅速な避難を図るためのさまざまな措置がとられているところです。
また、人吉市長は、市議会で発言されたとおり、人吉のまちづくりの基本理念として、生命、財産を守るために、共助、共創、共生を合い言葉として、洪水時においても決して犠牲者を出さないという決意のもと、避難対策をまちづくりの重要な項目の一つとして位置づけるとされています。さらに、その第一歩として、避難誘導のためのシステムの構築と住民と行政が一体となった避難体制の確立を図るとしておられます。
こうしたハード、ソフトの両面の対策が有効に機能するためには、地元市町村の主体的な取り組みと地域住民の皆様方の協力が不可欠と考えております。今後、国、関係市町村と連携しながら、費用やスケジュールを含めて具体的な検討を進めていく必要があると考えております。
質問:馬場せいし
次に、五木村の振興策についてお尋ねをいたします。
知事は、見解の中で、五木村に対しては、心情的な部分ではその思いを語られました。しかし、具体的な振興策については明確に示されることはありませんでした。
五木村からは、8月31日に行われた村民大会での決議や、これまでの長い歴史の中で、苦難と対立だけではなく、そこには約束という歴史もあると言われております。だれが知事になろうとも、県と五木村との約束は果たしていかなければならないことであります。
そこで、五木村の振興策について、今後どのように取り組み、まとめていかれるのか、お尋ねします。
答弁:蒲島郁夫 知事
五木村の方々が、川辺川ダム計画発表以来、42年の長きにわたり、この問題に翻弄され、苦しんでこられたことにつきましては、とても申しわけなく思っております。
また、下流域の方々の安全のために、ダムを受け入れるという苦渋の選択をされ、その後はダム建設による村の振興を強く待ち望んでこられたことを思うと、その期待に沿えない形になってしまったことには、大変に胸が痛む思いであります。
ダム計画の発表以降、県も、国とともに強力に事業を推進してまいりました。しかしながら、村の生活再建基盤の整備のためのダム工事の一部であるつけかえ道路の整備や農地造成などはまだ完了していません。また、国や五木村とも取り組んできた水源地域整備計画についても、道路改良事業など12の事業が残っております。
このような状況の中で、今回の私の表明によって、五木村の方々が村の将来に大きな不安をお持ちになったことも理解できます。だからこそ、私は、だれよりも強く、この五木村の苦難の歴史にこたえなければならないと思っております。
ダム事業が中止になれば、これまでの仕組みによる振興策は困難になるかもしれません。しかし、その場合にあっても、五木村の生活再建については、国土交通省とも財源問題を含めて十分に協議しながら、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
私自身が本部長となり、県庁内の関係部局が一体となって五木村の振興計画策定に取り組むために、五木村振興推進対策本部、これを表明後直ちに立ち上げ、昨日、第1回目の会合を開催したところです。
今回の私の判断をスタートラインとして、今後、五木村の方々の御意見を十分にお聞きした上で、また、必要に応じてそれぞれの専門家の御意見もお聞きしながら、農林業や観光の振興など、直接所得向上や雇用の拡大に結びつく取り組みや、五木村の人口構成、また、その特性を生かした新たな取り組みを進めることができるよう、振興計画の策定に臨んでまいる覚悟であります。
質問:馬場せいし
ただいま、意気込みについて、そして真剣に取り組んでいくというようなお言葉をいただきましたけれども、先ほどもおっしゃったように、インフラ整備自体がまだできていない、まず約束を果たすべきところをまだ果たしていないというような状況でありますので、その後振興策だというような話も出ております。
昨日抗議に来られました五木村長の言葉に、私は、きょうは――ラジオを通じてでしたから確認はいたしておりませんけれども、このまま論議だけで前に進まないなら五木は地獄だというような発言をされたというように聞いております。仮にそれが本当であれば、その言葉は大変重いものだというふうに思っています。ふだんどなたかがあちこちで使うような言葉とは全く違うというふうに思っております。
今後も論点がずれないように、五木村の声をしっかり聞いていただきまして、五木村のためになる、そういったことにしっかりと取り組みいただきたいというふうに思います。私どもも、しっかりとその辺は見させていただきたいというふうに思っております。
11日の発言に対しまして、一つ一つ確認をしてまいりましたけれども、改めてお尋ねをしたいというふうに思います。
知事は、そもそも治水は、流域住民の生命、身体、財産を守ることを目的とする、球磨川は、時として猛威を振るい、そこに住む人たちの生命、身体、財産を脅かす川、だからこそ治水が必要としながらも、球磨川そのものがかけがえのない財産であり、守るべき宝である、したがって、現行の川辺川ダム計画を白紙撤回し、ダムによらない治水を追求すべきであると表明しました。
私も、球磨川が地域の宝であるということには全く同感であり、異議はありません。しかし、それ以上に、地域住民の生命、身体、財産を守ることは政治、行政の使命であると考えます。
平成18年7月には、人吉盆地と一尾根隔てた鹿児島県の川内川では、計画を大きく超える洪水が発生していますし、人吉盆地の東の宮崎県大淀川では、17年9月、これまで経験したことのない洪水が発生しています。いつ尾根を隔てた球磨川水系に大きな雨が降るかは、まさに人知の及ぶところではありません。備えとして早急な治水対策が求められますが、知事は、国に対し、一体いつまで極限までの検討を求め続けるのか。
そのような中、水害が発生した場合、はい、それは河川管理者である国の責任ですとはまさか言えないでしょう。知事は、国に対し、極限までの努力をいつまで求め続けるお考えか、お聞きしたい。
また、これまで球磨川では、平成19年5月に球磨川水系河川整備基本方針が策定され、その策定に当たって、計11回にわたり検討小委員会が開かれ、その議論の中で国は膨大な時間と人員を費やしております。
河川工学を初め、環境を含めた幅広い分野の科学者が集中的に議論しており、私は、極限に近い相当の議論の積み重ねがあった結果として、人吉地点の河道で流せる流量は毎秒4,000トンが限界であるとの結論に達したと理解しております。
知事のこの極限発言を受けて、12日の新聞記事によると、国の春田事務次官は、河道掘削や堤防かさ上げなどダム以外の万策を検討するということであり、それでもなお対応できない場合、ダムをお願いする場合がないとは言えないとコメントしております。
知事も御存じのこととは思いますが、住民討論集会を実施していた当時には、ダム事業に反対する立場から、ダムの代替案として遊水地を挙げる人もいました。しかし、遊水地の候補地となる農地を持つ多くの方々の強い抵抗があって、ダム反対の立場の方の多くも、今では遊水地の実現可能性はないと考えていると思います。
また、河床掘削は球磨川水系河川整備基本方針検討小委員会でも議論され、人吉層の性質の問題やアユ期の工事あるいは球磨川下りなどの運航へ配慮するなら、非常に長期間を要することになるとの結果が示されております。
ここで少し説明しますと、アユの漁期は、通常、アユが遡上するのが3月から5月、産卵期が9月から10月、そして洪水の出水期が6月から10月です。そうなると、河床掘削などの工事をする場合、約4カ月、その中でも、それに加え、球磨川下りの運航にも配慮しなければなりません。つまり、検討小委員会では細かいところまで議論されているのであります。
私たちは、球磨川の治水を科学的に考えた場合、ダムに頼らざるを得ないので、最後の手段としてはダムを選択せざるを得ないと終始言ってまいりました。
知事は、最大の受益地である人吉市長の発言を重く受けとめられているようでありますが、あの発言は、地元では、反対派からは反対の意見として受けとめられ、市長に近い推進派からは穴あきダム容認と受けとめられている、まことに無責任きわまりない発言であります。
そのようなことから、住民を代表する人吉市議会では、去る9月9日に、国と県に対して、川辺川ダム建設による球磨川流域の治水実現に関する意見書を提出されております。また、知事が意見聴取された市町村や議長、八代市、芦北町、球磨村など、川辺川ダムによる治水の直接的な受益地である市町村を初めとした半数以上の市町村長や議長がダムの推進でありました。
そのような中で、球磨川という地域の宝を守りたいという思いは、ダムを推進している方々も当然持っているわけであります。しかしながら、行政の責任として、球磨川を宝として守っていくことも大切でありますが、それ以上に生命、身体、財産を守っていくことを尊重してきたはずであります。
知事が言う極限までの検討はともかくとして、極限まで検討した結果、それでも対応できない場合にはダムを検討対象に入れるのが科学的であり、自然体であると考えますが、いかがでしょうか。知事の考えを聞かせていただきたい。
答弁:蒲島郁夫 知事
球磨川流域においては、毎年のように水害が発生し、早急な治水対策が求められております。ただ、その治水対策は、住民のニーズにこたえ、住民の理解が得られるものでなければ実現することができないと考えております。
国土交通省には、ダムによらない治水対策を早急に検討していただくよう強く求めてまいりたいと考えています。
谷垣国土交通大臣と電話を通じてお話しし、国土交通省としても、ダムなしの治水対策を検討したいということなどをお聞きしました。できるだけ早く大臣に直接お会いして私の考えをお伝えしたいと考えており、現在その働きかけを行っているところです。
次に、私は、抜本的な治水対策を講じる場合は、ダムが最も有力な選択肢であるとした有識者会議の見解を評価しており、治水対策としてのダムの効用も認めております。
ただ、私は、川辺川ダムについての現在の民意は、ダムによらない治水を追求し、今ある球磨川を守っていくことを選択していると考えました。そして、国土交通省に対して、ダムによらない治水対策を極限まで追求するように求めています。
国土交通省は、私の判断を尊重する意向を示しており、県としては、今後の検討状況を見きわめてまいりたいと考えております。
質問:馬場せいし
まだ時間は十分残っておりますけれども、用意しました質問はここまでであります。
今回幾つかの質問を用意させていただきましたけれども、11日の知事の御判断から、私は、この川辺川問題1本に絞らなければならないかなというふうに思ってもおりましたし、また、ほかの方に手がつくというような状況でもありませんでした。また、きょう、たくさんの御答弁があれば、今の質問の項目でも1時間――足らないかもしれないというような気持ちの中でここに立たせていただきました。
一つ一つ疑問に思うところを私なりに確認をさせていただいたわけでありますけれども、一般質問、きょうから始まったばかりであります。本日の議論だけでなく、この議会の議論を通して、私たち、我が党なりのまた考え方を改めて表明することになるかというふうに思います。
最後に、少しだけお話をさせていただきたいと思います。
私は工業高校の建築科卒業でありますが、以前同窓の建築業の人たちと話したことを思い出しながら、蒲島知事の真意はここにあるのかもしれないと思ったことを話させていただこうと思います。
家を建てる場合の話であります。家に柱と壁が必要なことは当然ながらだれでも知っていますが、いろいろな注文があるそうです。リビングを広くしたいので、この柱と壁を外してくれ、眺めがいいように、ここは壁じゃなくて窓をあけてくれなどなど。注文ですから、できるだけ聞くそうであります。広い空間が欲しいという希望や限られたスペースを最大限使いたいというお客さんからのリクエストは結構強いそうです。しかし、構造計算上、安全を考えると、どうしても外せない柱があり、窓をつけられない壁があるわけです。そんなときは納得してもらうまで大変だという話でありました。
しかし、説得ができないからといって、仮に構造を無視して柱を外したらどうなるでしょう。その家はとても危険な家であります。この家は欠陥住宅ですから、台風や地震が来たら危ないので外に逃げてくださいと言わなければならないのです。ただ、この柱は絶対に外せませんとだけ言っても、おれが外せと言っているんだから外せと言われるそうです。だから、本当に危ないですけどいいんですか、本当によければ外しましょうかとお尋ねをすると、それは何といってもマイホームは一生に一度の大事業でありますし、それに何より命の方が大事だから、柱を立ててくれとなるそうであります。
知事は、議論が硬直する中で、これと同じように、危ないですけど本当にそれでいいんですねと問いかけ、本質の議論に戻ることができるかどうかをかけてみたのではないかと推察をいたします。
世界じゅうに数え切れないほどの川がありますが、一つ一つ形態は違います。流域の広さ、地形、土質、そして、この流域の山林の多くの61%は民有林であり、常に伐採の心配がつきまとうわけであります。国産材が見直され、伐採が活発に行われれば、一遍にしてはげ山になる心配もあり、その場合、森林保水力は極端に下がると思います。だからといって、とっさに対応することはできないのであります。そういったことも見据え、前もって備えることが政治、行政の責任であります。
それでも洪水を受け入れるという判断が地域から出ることもあるのかもしれません。しかし、一刻も早く実動に入らなければ、これまでの繰り返しであります。牛歩戦術みたいなことをやっちゃいけないんです。災害は忘れたころにやってくるという言葉がありますが、それが現実のものとならないように願いながら、知事には、今後最良の判断をされますよう強く訴え、私の質問を閉じます。