県議会一般質問
平成20年12月定例会
提案理由の説明:馬場せいし
自由民主党の馬場成志でございます。
議員提出議案第2号熊本県五木村振興推進条例の制定について、提案理由の説明を行います。
なお、冒頭申し上げておきますが、今回の提案におきましては、自由民主党、民主・県民クラブ、公明党、無所属改革クラブ、交渉会派すべての代表者の方も名を連ねていただきまして、まさに全会一致を目指し、十分に練り上げ、提案することができました。ここに、御協力をいただきました皆様に、心より感謝を申し上げたいと思います。
御存じのように、球磨郡五木村は、これまで長い間、まさに国や県の政策に一方的に翻弄されてきました。そのような意味では、被害者の立場に置かれ続けてきたわけであります。
川辺川ダム計画の発表当初、ダム湖に沈むことになる五木村は、村を挙げて反対でありました。その後、国、県のたび重なる説得及び下流域の住民が危険な状態に置かれているのになぜ協力しないんだといった圧力などもあり、その結果、賛成、反対、まさに村を二分する激しい対立を生み、裁判にまで発展するような状況に至るわけであります。
その後、紆余曲折があり、最終的には下流域住民のために苦渋の選択をし、平成8年、国、県、五木村による川辺川ダム本体工事着工に同意し、協定書を取り交わしたわけであります。
以降、五木村は、ダム建設を前提とした村づくりに邁進してこられました。村民がいま一度一つになれる一筋の希望だったからであります。しかし、その後、あれだけダム建設を望んだ下流域の一部から、まさかの反対という声が上がり、先般の相良村長、人吉市長のダム反対表明に続き、蒲島知事のダム計画白紙撤回表明に至ったわけであります。
この間、計画発表時には4,000人弱だった人口が、現在では約1,400人まで激減いたしました。これは、単なる過疎の現象ではなく、人間関係からすべてにおいてダム問題に翻弄され続けてきた結果でもあり、このような状況に置かれた五木村民の心情を察するとき、まさに断腸の思いであります。
我々県議会といたしましても、幾度となく意見書等を提出してまいりましたが、きちんとした形で五木村民にこたえることが我々の責務であると考え、今回の条例制定の提案に至った次第であります。
この条例案を作成するに当たり、主に3点について懸念あるいは議論がございました。第1に、知事が、県議会という公の場で五木村の再建については約束しており、それ以上に条例をつくる必要があるのか、第2点、県内市町村の中で、五木村という一自治体だけを対象とすることが果たして妥当であるのか、第3点、この時期に短期間に条例をつくるのは拙速ではないか、もっと議論を尽くすべきではないかという点でございます。
まず、第1点目につきましては、確かに知事は、県議会において、明確に五木の再建、振興について約束をされました。しかし、五木村からすると、知事は4年に1度の選挙によりかわる可能性があるということ、そして、県職員においても、何がしかの根拠となるもの、よりどころとなるものがなければ、五木村のために働くことが難しいのではないか、そのような点を十分考慮して条例化する必要があると判断いたしました。
第2点については、県民の皆様も、一地域の問題として、これまでの五木村の歴史を御存じでない方も多く、心ない発言が聞かれることはとても残念なことであり、今回の条例に違和感を持たれる方がいれば、ぜひとも関心を持っていただきたいと思います。
法制度的にも、確かに条例は、一自治体だけを対象とすることは想定してありません。しかし、必ずしもそれを禁止するものでもないということであります。であるならば、みずからの意思とは全く別の次元で、40年以上にわたり国、県の政策によって翻弄されてきた五木村に対し、村の振興を条例化して、確実に対応する必要があると考えます。
これまで五木村が置かれてきた特殊な状況、そして、それに対して国、県がどのようにかかわってきたかということを考えれば、今回の条例は、ごくごくまれな異例の条例であったとしても、十分に理解していただけるという結論に達しました。
第3点目については、時間的に国の予算編成の時期を考えますと、早急に12月議会で条例を制定するというスピード感を持った対応が必要であると考えました。
具体的案文につきましても、冒頭の前文に相当するところに、現在までの経緯、五木村が置かれた状況、そして国、県の責務を明示いたしております。第1条に目的を、第2条に体制の整備を、第3条に振興計画の策定を、第4条に財政上の措置を、そして第5条に国への要請、それぞれを規定した案文となっております。
なお、附則の2につきましては、御説明申し上げますが、もともと、今回の条例の性質上、恒久的な条例を目指したものではありません。ある意味では、時限的な条例として考え、おおむね5年を超えない期間という期間の限定を入れ、必要な見直しを県が行うということにいたしております。
県条例の性質上、国を縛ることはできませんが、この条例の成立により、県は、五木村振興のために、必要な体制を整備し、速やかに振興計画を策定し、そのための予算を確保するという、まさに来年度に向けた目に見える形での努力が要求されることになります。同時に、国に対して強力に要請を行わなければならないということになるわけであります。
でき上がった条例案は、簡素な体裁となっておりますが、ここに至るまでには、かかわっていただいた皆様にさまざまな御提案をいただき、激しい議論を闘わせ、一つ一つの文言においても、練って練って練り上げた、その結果でき上がった案文でございます。
このそれぞれの条文の奥に込められた思いというものを皆様にもお考えいただき、今まで説明してまいりましたことも十分加味してお受けとめいただきたいと思います。
以上が議員提出議案第2号熊本県五木村振興推進条例を提案する理由であります。
議員各位におかれましては、何とぞ趣旨に御賛同賜りますようお願いを申し上げ、私の提案理由説明を終わります。